JavaFXとSwing技術者の流出のツイートについてひとこと言っておくか

昨日、札幌Javaカンファレンスという事でJavaに関するイベントが開催されたのですが、講演の内容を受けて、このツイートが広く拡散(RT)されてしまいました。一言で言えば、ツイートされた内容のある程度は事実と思われますが、非常に語弊を生みかねない内容であり、不適切な内容であったと思います。すぐに風化されて忘れられる話かもしれませんが、内容が内容だけに主催者として黙っておくのは無責任と思い、このエントリーを残しておきます。

まず、このツイートのなにが問題であるかという点ですが、「(Oracleによる)JavaFX(2.0)の方針がSwing関係のエンジニアの流出の原因」としている点です。

SunのOracleによる買収・Swing・JavaFXに関して時系列順にまとめると、次のようになります。

  • Swingの開発がだいたい限界となる(Java6リリース前後)
    • AWTを引き継いでいることに対する制約
    • Webの進化によるクラスプラットフォームな利点の減少
  • JavaFXがモバイルからディスクトップまでカバーするソリューションとして発表
  • OracleによるSunの買収騒ぎ
  • JavaFXの大幅な方針転換
    • ディスクトップのみ対応になり、リッチなSwingの後継というイメージ
    • 開発リソースの問題
  • Swingへの開発リソースが減る
    • Java7ではほとんど新機能がない

講演の中ではこのような流れの話があり、その中で「元Sunのエンジニアで特にSwingをやっていたエンジニアがJavaを去っている」という話題があったわけです。

具体的な時期としては去年のSunの買収騒動からの時期となりますのでこの箇所は明らかに間違っています

JavaFXやりますよ、といった途端に一斉に退職して

そもそも、Oracleの買収そのものや方針・雇用条件などへの反発は多くあったと思われます。なにせ、Tシャツな会社の代表格をスーツな会社の代表格が買収したわけで、それだけで気分はいいわけありません。コミュニティもOracle買収の話が流れたときにはお通夜状態で、「Javaオワタw」的な雰囲気もありました。今では「思ったよりは環境が悪くなってないな」という感覚かと思います。
なので、最終的なキッカケになったのが「JavaFX2.0の方針」かもしれませんが、そもそもの買収に関する不満などがあったからという人もいるかもしれません。別にJavaFX2.0の方針が決まる前から退職することを決めていた人もいるかもしれません。また、Swing自体がオワコンになっていた為、新しい事(Androidなど)に興味を持つエンジニアがいてもおかしな話ではないでしょう。エンジニアであれば、より待遇の良く面白い仕事が出来る会社からのオファーに興味を持つのは自然です。

つまり、関係者ではないから言い切れませんし、言い切ってはなりません。

問題と思うことは2点あります。1点目、このようなデリケートな話題についてセミナーの中での前後関係を無視して140文字でつぶやくことは、あまりにも無責任という事です。特にTwitterは、非常に気軽に書く事ができます。おまけに前後関係がまったく無視された一部が次々と拡散されていく性質を持っています。震災の時なども数多くの「デマ」が飛び交っていましたが、そのような危険性のあるメディアであるということです。また、ITやウェブになれていない人であればともかく、ITの勉強会に出席するような有識者が行う行為ではないと思います。さらに、このようなTweetをされ、問題となってしまうと、講師の人も下手な事を言えない状況となります。セミナーで聞けるちょっとした業界のオフレコ話というのは面白い物ですから、それを聞けなくなったら悲しいことです。
2点目は、このTweetがとんでもない数のRTされていたという事です。確かにセンセーショナルな内容で興奮してRTボタンを押してしまうのは解りますが、その情報は信頼できるのでしょうか?デマの拡散と同じ問題であり、くだらないデマや拡散はIT系のTLで見るのは悲しいです。この辺の問題については各所で議論されているので割愛しますが、「デマですよ」というTweetがほとんどRTされなかったのは悲しい話ですね。

というわけで、今回の問題は運営側として少々見過ごすことはできませんでした。関係者各位に心から謝罪いたします。

いや「ネタだろ?」って思う人もいるかもしれませんが、ネタで済む問題と思えませんでした。会社に帰って同僚に話すレベルであればいくらでも誇張していいかと思います。しかし、TwitterTweet/RTする事はなにを意味しているのかについては、TLに投下する前に考えるべきです。このような発言が問題となってしまい、セミナーや勉強会が開催しにくくなってしまったら、一番困るのは誰であるのかを意識しましょう。