1-2 Javaの学習環境

プログラミングを学習する為には、幾つかの準備が必要になります。Javaで開発を行う場合、Sun Microsystemsが無償で提供しているJDK(Java Development Kit)と呼ばれる開発環境をインストールする事が一般的ですが、プログラミングを初めて学習する人にとっては敷居が高い点も否めません。そこでプログラミングの初学者を対象に、必要最低限の機能を持つ学習環境を提供します。

1-2-1 Javaletとは?

Javaletとはプログラミングを初めて学ぶ方を対象とした、学習用スクリプト言語です。一番の特徴はコンパイル作業が不要である事です。Java特有のオマジナイも不要であり、簡単なスクリプトを作成するだけで最初のプログラミングを体験する事が出来ます。

プログラミングを習得する時に最初に作成する伝統的なプログラムHelloWorldを用いてJavaとJavaletを比較してみましょう。HelloWorldとは画面上に「Hello World.」と文字列を表示するだけのプログラムです。
Javaを用いたHelloWorldは次のようになります。

public class HelloWorld {
    public static void main(String[] args) {
        System.out.println("Hello World!");
    }
}

このソースコードを、HelloWorld.javaという名前のテキストファイルに記述した後、コンパイルを行い、さらにjavaコマンドを用いて実行という手順を踏みます。それほど長いソースコードではないのですが、初めてプログラミングを学ぶ人にとって重要なのは「System.out.println("Hello World!");」の1行だけです。一般的な入門書でも残りの部分は全てオマジナイという事で解説を行いません。プログラミングを学ぶ人に解説するのは難しいからです。劣悪な本になると、最後まで読了しても解説がない場合もあります。また、「System.out.println("Hello World!");」の部分だけを抽出しても、printlnは出力するという意味とは予測もつきますが「System.out.」に関してはJavaをある程度学習しなければ理解できないでしょう。
次にJavaletでのHelloWorldを示します。

println("Hello World!");

このソースコードを、テキストファイル(Javaと違って名前も自由)に保存したならば、javaletコマンドを使って実行さるだけです。Javaの場合と違い、大量のオマジナイがありません。解りにくい「System.out.」も省略できるので、純粋に「Hello World!を出力する」という単純なコンピュータへの命令のみを学ぶ事ができますね。

このように、JaletではJavaの文法が限定された形ですがそのまま適用でき、初めてプログラミング言語を習得する人にとってのオマジナイは省略できるように考慮されています。従って、この講座を終了しプログラミングの基礎を習得した後にJavaを本格的に習得しようとした時、ほとんどの文法に関する知識を自然に引き継ぐ事ができます。また、書くことができる文法・構文・命令などが基礎的な事に限定されています。従って、自然と基礎的で重要な事を学ぶ事ができます。さらに、Javaletでは推奨される読みやすい書式に限定して許可する事で一般的に読みやすいコードを記述できるようになるでしょう。

尚、Javaletは開発中です。この講座を進めながら必要な機能を実装していくので、不具合や要望等があればコメント等で教えてもらえれば助かります。

1-2-2 実行環境の準備

Javaletはそれ自身もJavaのプログラムとして提供されます。従ってコンピュータにJava実行環境(JVMがインストールされている事が必要です(JDKは不要です)。実行環境(JVM)とは一般的にはSunが無償で提供しているJRE(Java Runtime Environment)と呼ばれるソフトウェアの事です。Windows XP等では最初からバンドルされていると思いますが、インストールされていない場合はインストールする必要があります。
自分のパソコンにJREがインストールされているかは次のようにして確認できます。

  1. Windowsのスタートメニューから[ファイル名を指定して実行]を選択
  2. 名前の欄に[cmd]と入力して[OK]を押し、コマンドプロンプトを起動
  3. コマンドプロンプト上で、[java -version]と入力して、エンターキーを押す

画面に[java version "1.6.0_02"]と言ったような文字列が表示されたならば、そのバージョンのJava実行環境がインストールされています。尚、この画面の事をコマンドプロンプトと呼びます。プログラミングを学習する上では最低限の操作を覚えておかねばなりません。

もし、「'java' は、内部コマンドまたは外部コマンド、操作可能なプログラムまたはバッチ ファイルとして認識されていません。」とエラーメッセージが表示されたのであれば、Sunのサイト(http://jp.sun.com/java/)でJREをダウンロードしてインストールをして下さい。

1-2-3 作業用ディレクトリの作成

プログラムのソースファイルなどは作業用に用意した特定のディレクトリ(フォルダ)に格納しておくと便利です。最初の作業としてCドライブの直下にJavaという名前のディレクトリを作成し、その中にtraningという名前のディレクトリを作成し、ここを作業用のディレクトリとする前提で話を進めます。
もし、ディレクトリ(フォルダ)を作成する方法が解らないない場合は、最初にWindowsの基本操作を習得してください。

1-2-4 コマンドプロンプト

コマンドプロンプトのようなインターフェイスCUI(Character-based User Interfaceと呼ばれます。パソコン=Windowsと認識している人には馴染みにくいかもしれませんが、WindowsのようなGUI(Graphical User Interfaceが登場する前のコンピュータのインターフェイスコマンドプロンプトのようなCUIです。CUIでは入力がボタンやマウスではなく、単純な文字列(コマンド)でコンピュータと対話します。
尚、コマンドプロンプトでデフォルトではコピーなどの操作が出来ません。タイトルバー部分(青い部分)を右クリックしてプロパティを表示し、「簡易編集モード」にチェックをいれておきます。

CUIを扱う場合、「現在、コンピュータ内のどのディレクトリに自分がいるのか?」という事を意識する事が重要です。コマンドプロンプトを起動すると、通常はユーザーのホームディレクトリ(Windows XPであれば、C:\Documents and Settings\[ユーザー名])上でコマンドプロンプトが起動します。コマンドプロンプトでは原則として、自分がいるディレクトリに関する操作しかできません。まずは自分のいるディレクトリを移動するCDコマンド(Change Directory)を覚えましょう。

それでは1-2-3で作成した作業用ディレクトリに移動してみます。最初に次のようにコマンドを入力してエンターキーを押してください。

cd \[Enter]

cdの後にスペースを挿み、\を入力すると現在いるドライブの最上位に移動できます。コマンドプロンプトを起動したならば、最上位のディレクトリに移動してしまうと作業が楽でしょう。
次にJavaディレクトリに移動します。

cd Java[Enter]

Windowsではファイル名やディレクトリ名において大文字と小文字の区別をつけません。従って、「cd JAVA」等でも移動できます。
次にtraningディレクトリに移動しましょう。尚、コマンドプロンプトではTabを押す事で入力補完機能が使えます。cd tとまで入力し、Tabキーを押せば他にTで始まるディレクトリが存在しなければ、Traningと入力されます。

cd traning[Enter]

これで目的のディレクトリに移動する事ができました。
尚、これらの操作をまとめて行いたい場合は、次のように入力する事もできます。

cd c:\java\traning[Enter]


この他にも便利な使い方が幾つかあるので紹介しておきます。
現在のディレクトリから1つだけ上の階層に移動したい場合は、次のように入力してください。

cd ..[Enter]

この「..」は1つ上のディレクトリを表し、「.」は現在のディレクトリを表します。色々な場面で出てくる表記方法なので覚えておきましょう。

Windowsコマンドプロンプトエクスプローラーからのドラック&ドロップにも対応しています。cdと入力した後、エクスプローラーから移動したいフォルダのアイコンをコマンドプロンプトにドラック&ドロップすれば、目的のディレクトリが文字列として入力され、簡単に深い階層などに移動する事も可能です。
また、現在いるディレクトリのファイル一覧は「dir」コマンドを使うと表示できるので、これも合わせて覚えておきましょう。

1-2-5 Javaletのインストール

現在、Javaletにはインストーラー等はありません。次のURLからJavaletをダウンロード後、解凍するだけです。フォルダごとc:\java\traningの下に移動させて下さい。
http://svn.sourceforge.jp/cgi-bin/viewcvs.cgi/*checkout*/trunk/target/javalet.zip?rev=7&root=cappuccino

サンプルのソースファイルHelloWorld.jが同梱されていますので、実行してみましょう。コマンドプロンプトを起動してjavaletディレクトリに移動したならば次のようにコマンドを入力して下さい。

javalet HelloWorld.j[Enter]

このjavaletコマンドは起動用のバッチファイル[javalet.bat]を実行しています(.batは省略可能)。スペースに続けてソースファイル名を入力してください。
また、ソースファイルの後ろにスペースを空けて-sまたは-sourceと指定すると、プログラムの実行と同時にソースコードも出力されます。

javalet HelloWorld.j -s[Enter]

簡単なプログラムかと思いますが、プログラミングを学習する時にはこのような簡単な事を多く学び、次第に複雑なプログラムを作れるようになっていきます。これから、基礎をしっかりと身に付けていきましょう。