74-「イエス」から始める

プログラマが知るべき97のこと」の74個目のエピソードは、顧客とのコミュニケーションに関する話です。システム開発を行っているならば、顧客から無茶な要求を受ける事は珍しい事ではありません。顧客はシステムの内部的な構造は知りません。したがって、システム開発に携わっている人からすれば無茶なことかもしれませんが、顧客にとっては無茶な事とは限らないのです。そんな時、自分もそうですが、まずは「出来ない」と答えてしまいます。はじめに「ノー」と答えるのは、保身的な意味合いが強いでしょう。「出来る」と答えてしまうとそれがコミットメントとなってしまい、どんな事があろうとやらなければ行けない空気になります。「検討する」とか「善処する」という答えも同様です。プログラマは、出来る可能性は伝言ゲームの中で「イエス」となる事を知っているのです。
ですが、このエピソードでは「イエス」から始めようと提唱しています。顧客は無茶な要求をしてきますが、その理由や背景に耳を傾け、本当は顧客が何を求めているか、どうして求めているかを理解するところから始めます。

要望が出されたコンテキストがわかれば、新しい可能性が広がることが多いのです。

顧客は要求を形にすることはできません。要求を正確に表現できるのであれば、システムアナリストは不要です。我々の仕事はシステムを作ることですが、その前提として要求が正しく引き出せている事があるのです。要求が間違っていればどれだけすばらしいシステムを作っても顧客に価値はないのです。したがって、無茶な要求であっても、それは顧客の要求を引き出すキッカケと考える方が良いのです。

「イエス」から始めれば、人との対立は生まれず、協力関係が生まれるのです。

無茶な要求をされたとしても、「いいね!」と答えるだけです。否定からではなく肯定から入ることで相手の気分がぐっと良くなるはずです。気分が良くなるということは、コミュニケーションが楽になるということです。最終的に出来ないという事に落ち着いたとしても代替案の提案などを、相手に気持ちよく受け取ってもらえる可能性が高くなります。自分も苦手です。少し筒改善しようとしていますが、どれだけ意識していてもまだまだ「ノー」と答えてしまいます。
しかし、理由がなかったり理由自体が無茶な要求は、断固として「ノー」と言うべきかもしれません。日本特有な商習慣なのかもしれませんが、顧客が「あれがほしい」と言ったならばそれは実現して当然という空気があります。「やっぱりいらない」と言えばそれも実現します。担当者の突発的な思いつきや、責任者の言い訳を用意するために、無茶な要求をされたならば、それは「ノー」と言えるべきでしょう。特に顧客と直接契約してシステム開発をしているのではなく、元請けから下請けに丸投げされているような場合は、保身的になってしまいます。このあたりの問題は何時になっても解決しそうにありません。

プログラマが知るべき97のこと

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